「神戸限定」あれこれ

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前回「とくれん」の話題を取り上げ、思わず郷愁に浸ってしまったが、「とくれん」のように神戸を離れて初めて気づく「神戸限定」が意外に多いことから、この機会にまとめておきたい。

先日の帰省で、お絵描きが大好きな娘のために「お絵かき帳」を購入するため近くのダイエーへ行ったのだが、文具売り場で思わず目に飛び込んできたのが、ピンクの表紙の自由帳であった。そう、知る人ぞ知る「神戸・関西ノート」謹製の学習帳である。

小学校で「ジャポニカ学習帳」などを使っている子供は転校生ぐらいで、ほとんどの生徒がこのノートを使用していた。今では神戸っ子しか使っていないことから「神戸ノート」と呼ばれている。

ピンクの自由帳ととくれん

自由帳の近くには、それぞれ表紙の色が紫色の連絡帳、黄緑色の国語帳、青緑色の百字練習帳、黄色い理科帳、オレンジ色の社会帳、灰色の算数帳が陳列されていた。それぞれ表紙には神戸の風景が印刷され、たとえば自由帳は王子動物園のフラミンゴと白鳥、連絡帳は東遊園地、百字練習帳は神戸港とポートタワー...といった感じである。懐かしさのあまり、書店での立ち読みのごとく手に取ってみると、それぞれ、ノートの中身や表紙裏の各教科の説明文(たとえば算数帳であれば、学年によって違うが、時計の見方や九九の一覧表などが書かれている)は当時のままであるが、表紙の写真が微妙に"今風"になっていた。たとえば、私が小学生のころ、算数帳の表紙には東遊園地にあったロケットのようなオブジェが印刷されていたのだが、今は違う写真になっているし、裏表紙にはバーコードが付いてるし...昔の面影を残しつつも進化していた。ただ、百字練習帳の神戸港とポートタワーは、時が止まっているかのように、私が小学生当時に使っていたものと同じのようであった。今のポートタワーの周辺には高層ビルが乱立しているが、百字練習帳のポートタワー周辺の景色には、遠くに貿易センタービルがあるだけの、震災のはるか前、おそらく今から30~40年前の神戸港の写真が使われていた。

個人的には懐かしさのあまり、店に陳列されているノートをすべて買いそろえたかったが、買ったところで使い道がないこともあって、自由帳だけを買って帰った。ちなみに120円であった。娘はピンクの表紙の自由帳をいまでも大事に使い、なんだかわからない絵を書きつづっている。

私が小学生の頃は、ほかにも茶色い表紙で、中の原稿用紙が簡単にノートから取り外せる作文帳やイラスト表紙の「音楽ノート」などがあったが今でもあるのだろうか。

さて、この神戸ノートの原点について『関西人の謎でんねん!』 (KAWADE夢文庫)という本によると戦後の物資が足りない時期に子供たちにはちゃんとしたノートを揃えてあげたいという神戸市当局の意向があり、制作されたのだとか。そして現在も神戸の小学生達はこのノートで勉強しているそうだ。ただし神戸市教育委員会が「神戸ノート」の使用を児童に義務化していることもないそうだ。前回の「とくれん」といい、「神戸ノート」といい、当時の教育行政に携わっていた方々の努力があって生まれた商品といえる。

最近では表紙に神戸の風景が印刷されていることから、観光客がお土産として買っていくこともあるとか。神戸を離れた神戸っ子のために大人でも使える大学ノート風の神戸ノートも作って欲しいものである。

ところで「日番(にちばん)」という言葉をご存じだろうか。これは物ではなく、学校の日直のことであるが、意外にも、この言葉も「とくれん」や「神戸ノート」と同様、神戸を一歩出ると全く知っている人がいなくなる不思議な神戸限定のモノなのだ。私がこの事実を知ったのは去年のこと。私も参加している方言について語り合うコミュニティサイト「ほべりぐ」で「日番」が神戸限定の呼び方であることを初めて知ったのである。小中高と「日番」が当たり前だった私にとって、未だに共通語の「日直」のほうに違和感を感じる。「ほべりぐ」では「日番」と「神戸ノート」について市教委指導課の方に問い合わせをされた方がおり、その方の報告によると市教委の人ですら「日番」が神戸限定であったことを知らなかったそうだ。

※参考までに「ほべりぐ」に上がっている神戸限定の話題をリンクとしてまとめておきたい。
とくれん
「日直当番」のこと、何て言いますか??
神戸の指定ノート
2組に分けるとき

最後に、この記事に掲載した写真は通販で大人買いした「とくれん」と娘が愛用している「自由帳」。小学生時代を神戸で過ごした方なら泣いて喜びそうな組み合わせではないだろうか? 通販で「とくれん」を購入すると『桜組とくれん通信』なる学級新聞(?)が付いてきた。これによると、現在は神戸全域の小学校と兵庫、大阪、京都、北海道の一部の小学校の給食で出されているそうだ。徳島県で製造されているのに徳島県で食べられていないというのも面白い。「とくれん」ファンなら、とくれん情報満載の『桜組とくれん通信』もチェックしておきたい。

ちなみに沖縄県那覇市における「とくれん」の食べ頃は冷凍庫から出して自然解凍すること50分が最適である。

※「とくれん」の通販サイト:株式会社桜(とくれん正規代理店)