モノレールがやってきた

2003年9月 1日 00:00

2003年8月10日、日本で唯一"鉄道"がなかった沖縄県にモノレールが開通した。愛称は沖縄方言の「ゆいまーる(助け合い)」にちなみ「ゆいレール」と名付けられた。車両は2両編成で那覇空港から首里までの約13kmを27分で結ぶ。

ゆいレール

ところで、開業初日にも関わらず、いきなり車両事故が発生し、一部が運休するというハプニングがあった。駆け込み乗車してきた子供の指が扉に挟まれ、これを見た乗客が子供を助け出そうと力任せにドアをこじ開け、部品が変形したことが事故の原因と言われている。子供が扉に挟まれ、それを乗客が助けようとする姿は、まさに沖縄に根付いた「ゆいまーる精神」そのものであり「ゆいレール」の面目躍如といったところだが、子供の頃から電車が生活の一部になっていた私にしてみれば、駆け込み乗車は危険であることは自然と体に染みついているし、また車掌(モノレールの場合は運転士)は扉を閉めるとき、乗客の出入りを確認して閉めるのが当然だという感覚がある。見方を変えれば、この事故は電車に不慣れな県民性(?)を浮き彫りにした事故であったともいえる。

モノレール会社側も、多くの利用客が電車に不慣れということを見越して、7月下旬に「モノレールの乗り方」と題した県の広報番組を民放各局で放送した。これには切符の買い方、自動改札機の通り方などが事細かに"実演"され、なかには「自動改札機の切符投入口に小銭をいれないように」という注意まで盛り込まれていた。実際、このようなトラブルはなかったものの、駅に行くと券売機では駅員の説明を受けながら切符を買う人がいたり、自動改札の前で立ち往生する人びとを見かけた。

その一方で、駅や車両には沖縄ならではの心憎い演出が所々に施されている。まず切符の券売機。本土の券売機では、ほとんど使えない2,000円札で切符を買うことができるのだ。ただ残念なのは、沖縄観光のシンボル守礼門が描かれている2,000円札であるが、やはり沖縄でもあまり流通していない。

ゆいレールの切符

ちなみに私は沖縄に1年半以上住み着いているが1回しか手にしたことがない。モノレールの車内では各駅のアナウンスとともに、沖縄民謡をあしらったメロディが流れる。しかも各駅ごとに違う曲であり、空港から乗る観光客は、これまで以上に旅情をかき立てられるのではないだろうか。また車内には窓際に一輪挿しが備え付けてあって、花が飾られていた。通勤や通学で利用する人にとってはひとときの癒しになるだろう。また最新式のモノレールだけあって、走行は静かであり、車内の揺れもほとんど感じることはなかった。

今のところ、物珍しさもあってモノレールは連日満員の大盛況であるが、果たして、このモノレールが、究極の車社会で、渋滞が当たり前の沖縄に新風を吹き込むことができるのだろうか。

「沖縄都市モノレール」とはいうものの、天下のNHKニュースですら「那覇都市モノレール」と報道するとおり、那覇市内しか走っておらず、しかも那覇市内であるにもかかわらず、我が家のように最寄り駅から30分も離れているような地域がかなり存在していることを単純に考えても、全県的(本島的)な利便性が感じられないのである。将来的にはモノレールの延伸計画もあるようだが、モノレールそのものが近距離移動を目的とした乗り物だけに、その延伸距離も限界があるだろう。

個人的には那覇から名護までの鉄道を引けば、それなりに沿線を中心に発展し、なおかつ慢性的な渋滞も解消できるのではないか...と思ってみたりするのだが、これはこれで問題があって、鉄道建設の工事中に今まで以上の大渋滞が発生し、物流が滞り、鉄道が完成するまでに、ただでさえ全国最悪の経済状況をさらに悪化させる可能性が考えられる。

それなら地下鉄はどうかというと、沖縄本島の地下には沖縄戦の不発弾が多く眠っていて、工事に危険を伴うという説と、地下は珊瑚礁から変化した堅い石灰質になっていて、容易に地下が掘れないという説があり、いずれにせよ非現実的だという。

となると、残された道は現在のモノレールを有効活用する方法である。たとえば、車社会の沖縄とモノレールのコラボレーションともいうべき「パーク&ライド」方式は、都心部の渋滞解消に少しは役立つかもしれない。これは自家用車で駅近くの駐車場に乗り付け、都心部の移動はモノレールを利用するという方法であり、実際、本土でも試みられている。もちろん、これはバスにも当てはまり、駅前に停留所を設けて、本島各地をバスで結ぶ方法である。これが実現すればモノレールもバスも、そして県民にとっても利益になると思うのだが、現実はそううまくはいかないようである。バス会社側がモノレール開業に異常なまでの危機感を持ち、モノレールとの乗り継ぎ割引運賃の割引率を巡って、いがみあいが続いている。また駅を拠点としたバス路線の改変も一部の路線をのぞいては実現には至っていない。ある路線に至ってはモノレールと併走するものもあり、現時点では実に無駄な交通体系となっている。

とにかく走っている区間が短いなりにもモノレールの開通によって、沖縄全体が大きく変わる可能性を秘めていると思うのだが、それは県民がモノレールを単なる「観光地の乗り物」ではなく「生活道具」として使いこなせるかにかかっていると思う。

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