気まぐれ歳時記2000年9月1日
 

日本が世界に誇るスポーツ「競輪」

 「競輪」といえば競馬や競艇などと同じくギャンブルの一種と思われがちですが、今月中旬から開催されるシドニーオリンピックから自転車競技の一つとして競輪が加わります。しかも競輪の発祥地は日本。オリンピックに日本生まれのスポーツが加わるのは柔道に続き2種目となります。
 ギャンブルではなく国際競技として行われる競輪は1周250mの「バンク」と呼ばれるコースを8周、つまり2kmで争われます。しかし、選手たちはスタートから6〜7周目まで、実にゆっくりとしたスピードでバンクを周回します。一見、のんびりとした自転車競走といった感じですが、この段階で選手たちは「駆け引き」を演じているのです。最終的に1着になるためには「どの位置に自転車をつければいいのか」「ほかの選手は、どのような勝負を仕掛けるのか」などと走りながら考えているのです。
 そして先頭を走っている選手がゴールまで1周半になると「ジャン」と呼ばれる鐘が打ち鳴らされます。ジャンが鳴ると同時に、本当の「競走」が始まり、自転車は一気に加速し、数秒で勝負は決着します。
 しかし、ゴールインをしたあとでも、選手たちはバンクを何周もします。これは、競輪用自転車にブレーキがないためで、自然に減速するのを待っているのです。
 競輪用自転車にはブレーキがないだけではなく、普通の自転車と違ってペダルの「空回り」もありません。極端な例ですがペダルを進行方向と逆に回せばバックすることも可能です。つまり、競輪はペダルをこぐ脚力だけでスピードを競うのです。
 また競輪では、他の自転車競技と違って、先頭を走っているにも関わらず、ゴール直前になるとコースから外れて勝負に参加しない選手がいます。この人は「先頭誘導員」といい選手ではありません。
 先頭誘導員は選手たちよりも25m手前からスタートし、選手たちの「風よけ」の役目を果たしています。脚力だけがすべての競輪選手にとって、向かい風は必要以上に体力を消耗させます。競技中でも、選手に無駄な体力を使わせない心配りがあることを考えると、競輪は実に日本的なスポーツといえるのではないでしょうか。

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