気まぐれ歳時記2002年1月1日
 

マグニチュードの謎

 まもなく、あの「阪神・淡路大震災」から7年になろうとしています。
 一時は4万戸もあった仮設住宅は姿を消したものの、町にはまだまだ空き地が目立ち、また神戸最大の繁華街・三宮地区にも、震災で被災し営業できなくなったホテルが今もそのまま放置されていたりします。
 テレビなどで見る阪神・淡路地域の町は立ち直ったかのように見えますが、表通りからすこ奥へはいると、まだまだその傷跡が建物にも、人々の心や暮らしに残っています。

 さて、震災に関する記録は当サイトを始め、ネット上でも読むことができますので、今回は「地震」にまつわる、ちょっとした「謎」について取り上げてみたいと思います。
 昨年、日本国内で発生した最近の大地震のマグニチュード(M)の数値が、軒並み変更されたのをご存じでしょうか?
 2000年10月に発生し、比較的、被害が少なかった鳥取県西部地震のマグニチュード(M7.3)が、大惨事となった阪神・淡路大震災(M7.2)よりも大きく発表されました。
 マグニチュードは「地震の規模」を示し、揺れの強さや被害の大きさを示す数字ではありませんが、国民からマグニチュードの数字が軽く見られる心配もあったことから、気象庁は「マグニチュード検討委員会」を立ち上げました。
 この検討会ではマグニチュードの計算式をこれまでの方式から変更したほか、新しい計算式によって1994年以降の大地震のマグニチュードが再計算されました。これによると1995年の阪神・淡路大震災は「7.2」から「7.3」に変更されています(2000年鳥取県西部地震は変更なし)。
 しかし、地震学者らが世界共通のものさしとしているものは、気象庁が発表しているマグニチュードではなく「モーメントマグニチュード」と呼ばれるものです。これによると2000年鳥取県西部地震のマグニチュードは6.8に対して、阪神・淡路大震災のマグニチュードは6.9でした。
 なぜ、2種類のマグニチュードがあるのでしょうか?
 これには計算式の違いのほか、速報性の違いがあります。気象庁のマグニチュードは素早く発表することが重要なことから、観測地点の揺れ幅などから計算します。これに対して、モーメントマグニチュードは地震が発生したときの断層のズレ幅などから求めるため、すぐに発表することはできません。
 また気象庁のマグニチュードは揺れ幅が計算の基準になっていることから、地震計を設置している場所の地盤(じばん)の影響を受けやすいという欠点があります。地盤の固い地域を震源とする地震よりも、地盤の軟らかい地域が震源の地震のほうが、マグニチュードの数字が実状よりも大きくなってしまう傾向があるのです。
 このような不具合をなおす意味でも、気象庁では、将来的にこれまでの気象庁のマグニチュードとモーメントマグニチュードの2つの数値を発表することを検討しているそうです。
 ちなみにマグニチュードの数字が1つあがると、地震が持つ力は約30倍もあがります。たとえばマグニチュード8の地震は、マグニチュード7の地震が一度に30回起こったのと同じ力を持っています。


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