気まぐれ歳時記2001年6月1日
 

悲しいエリマキトカゲ

 テレビのCMで一躍人気者になったエリマキトカゲが初めて日本にやってきたのは1984年6月15日のことでした。
 このトカゲはオーストラリア北部からニューギニア南部にしか生息していません。名前の通り、首の後ろにある「えり巻き」が大きな特徴です。
 エリマキトカゲが日本で知られるようになったのは、自動車メーカーが新車のイメージキャラクターとして、エリマキトカゲをテレビコマーシャルで採用したのがきっかけでした。トカゲがえり巻きを広げる姿は視聴者にインパクトを与え、それと同時に後ろ足だけで立ち上がって走る姿は、新車のスピードの速さを印象づけるという理由でした。
 ところがエリマキトカゲが、えり巻きを広げるのは「命がけ」の時だけなのです。
 たとえば自分のなわばりに侵入者が来た場合、普段は背中に折りたたまれているえり巻きを広げて威嚇(いかく)します。相手が自分より強いとわかるとエリ巻きを広げたまま、後ろ足だけで立ち上がり、走って逃げます。しかし、多くのエリマキトカゲは、広げたえり巻きの重心を支えきれず、首の骨を折り、命を落します。
 自動車メーカーのコマーシャル撮影では、トカゲのそばでガラガラヘビをちらつかせて、エリマキトカゲを走らせました。命がけの撮影であるにも関わらず、ブラウン管ではユーモラスに映るエリマキトカゲの姿は大ブームを巻き起こしました。当然、そのエリマキトカゲは撮影後まもなく命を絶ちました。
 しかし、エリマキトカゲをキャラクターに採用した新車は自動車会社が予想したほど、売れなかったそうです。それは大人よりも子供の間でエリマキトカゲがブームになったからです。

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