気まぐれ歳時記2001年3月1日
 

なぜ未成年者はたばこを吸ってはいけないの?

 1900年3月7日「未成年者喫煙禁止法」が施行されました。100年以上も前の法律とはいえ、現在でも有効です。もちろん、この法律が理不尽に未成年の喫煙を禁止しているわけではありません。
 一生のうちで最も体が発達する中高校生の時期にたばこを吸いはじめると運動能力を低下させ、体の発育に悪影響を及ぼすことがわかっています。
 普通、激しい運動をした後、体は多くの酸素を取り入れて、疲労回復をうながします。しかし、たばこを吸うと、煙に含まれる一酸化炭素が赤血球の酸素運搬能力を低下させ、疲労回復を鈍らせるのです。喫煙が常習化すると疲労が取れなくなるどころか、精神の安定のために、再びたばこを吸うようになり、これが繰り返されることによって、いつも疲労を感じやすくなる体になります。これはたばこに含まれるニコチンという物質の依存症によるもので、その作用は麻薬にも似ています。大人でも簡単に禁煙ができないのはニコチンの影響によるものです。
 また、たばこは喫煙者が吸い込む煙よりも、たばこの先から出てくる煙のほうが有害だというのをご存じでしょうか?
 一酸化炭素は、喫煙者が体内に吸い込む煙より、4.7倍もの濃度がたばこの先から空気中へ放出されています。また、ある発ガン物質では喫煙者が吸い込む煙よりも100倍以上の濃度が放出されています。
 喫煙者とたばこを吸わない人が、長時間、同じ部屋にいた場合、当然ながら、たばこを吸わない人のほうが、先に健康への悪影響が出てきます。これを「受動喫煙」といいます。
 受動喫煙は頭痛、くしゃみ、涙目、ひどいものになると体温の低下、血管収縮といった症状を引き起こします。
 しかし、受動喫煙は、その場から離れるか喫煙者に注意をすることで、たばこから身を守ることができますが、受動喫煙から逃げることができない人もいます。それは、お腹の中の赤ちゃんです。
 喫煙者が体内に取り込む煙は、体外へ出る煙よりも害が少ないとはいえ、お腹の中の子供にしてみれば大問題です。
 妊娠中の女性がたばこを吸った場合、最悪、流産の危険があります。無事に出産できたとしても未熟児になる確率が高くなり、子供が成長しても呼吸器系の病気にかかりやすいことが、わかっています。
 また、妊婦自身がたばこを吸わなくても、妊婦の同居家族が吸うたばこの煙によって、お腹の赤ちゃんに同じような影響が出ることも確認されています。
 1999年、国連機関のひとつである「世界銀行」がまとめた報告書『たばこ・流行の抑制』によると、なんと、2000年に、たばこが原因で死亡する人は全世界で400万人に達すると予想しました。
 ショッキングな報告ですが、この数字は、たばこと無関係な世界銀行が、たばこに関する報告書を作った最大の理由でもあります。特に発展途上国では子供のころから喫煙し、若くして死ぬ事例が多く、このことが発展途上国の経済発展を鈍らしているというのです。
 また日本に限れば、火災原因の上位に「たばこの火の不始末による火災」が入っています。たばこは火を扱うだけに、喫煙者自身の命だけでなく、他人の財産や命をも奪いかねません。
 世界銀行が予測する、たばこが原因で死ぬ400万人の中には、健康被害以外の死亡原因も含まれています。それは「たばこの火の不始末による火災」の死者です。
 日本では、火災原因の上位に「たばこの火の不始末による火災」が入っています。たばこは火を扱うだけに、喫煙者自身の命だけでなく、他人の財産や命をも奪いかねません。
 つまり、たばこは、たばこを吸わない人の健康や財産にも悪影響を及ぼし、そして自分の健康を損なうおそれがあるのです。
 たばこは自分の健康管理と他人への気配りができる人だけが吸える、まさに「大人の特権」といえるでしょう。

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