気まぐれ歳時記2000年5月1日
 

実録!!人工免疫事始め

 一度、ある病気にかかると、二度目に、その病原菌が体内に侵入しても、その病気にはならないという体の機能を「免疫(めんえき)」といいます。
 イギリスの医師ジェンナーが「人工免疫」の実験をしたのが1796年5月14日のこと。
 当時「天然痘」と呼ばれる病気が、人々を恐怖と不安に陥れていました。天然痘は感染力が強く、死亡率が高い病気だったのです。
 ジェンナーは、この天然痘予防のために、人間の天然痘に似ている、牛の病気「牛痘」にかかった牛の「うみ」を人間に移植すれば、天然痘の菌に感染しても免疫で発病しないのでは、と考えていました。
 ところがジェンナーは、その実験を自分の体でする根性がなかったために、縁もゆかりもない他人の8歳になる男の子を実験台にしたのです。
 まず、男の子の腕に、牛痘に感染した牛の「うみ」を注入しました。当然、周りからは猛烈な抗議の声が挙がっていたことは書くまでもありません。
 非難の嵐が吹き荒れる中、さらに1か月後、実験の結果を調べるために、この男の子に天然痘の病原菌(これを「種痘」という)を植え付けました。
 しかし、男の子は病原菌を注入したにも関わらず、感染力が強い天然痘にかからなかったのです。
 つまり、人工的に免疫を作ることが実証されました。
 ジェンナーが発見した「人工免疫」は、今、予防接種という形で、私たちの身近になりました。そして実験に使われた天然痘は地球から絶滅したと言われています。

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