コラム 6年目を迎える「神戸ルミナリエ」
東遊園地
巨大なスパッリエーラが設置される東遊園地は震災直後、市内中心部へ救援物資を送り込むためのヘリポートとなった。その後、東遊園地は震災復旧工事のため閉鎖され、第1回ルミナリエでも会場にならなかった(写真は1995年1月20日撮影)。
 今や、神戸に本格的な冬を告げるイベントとなった「神戸ルミナリエ」。ここ数年は資金難などから「今年が最後か?」と言われ続けていたものの、今年もなんとか開催へこぎ着けました。今年は12月12日〜25日まで開催されます。
 「神戸ルミナリエ」は阪神・淡路大震災の犠牲者の鎮魂と復興・再生の願いを込めて、1995年12月に開催されたのが最初です。
 その後も財界や市民の開催要請を受けて、ルミナリエは毎年12月に開催されることとなり、今では神戸の冬の風物詩となっています。そして電飾のデザインも開催されるごとに凝ったものになっていきました。
 また、回を重ねるごとに、ルミナリエの明かりは震災復興に立ち上がる震災被災者の精神的支えになっていました。
 たとえば開催当初、光の回廊「ガレリア」の通り抜けに一方通行の規制はなかったのですが、観客の増加に伴い、元町側から東遊園地への東向き一方通行の規制が加えられました。その東向き一方通行に対し、市民の間からは「地震発生が夜明け前だったことから、太陽が昇る東へ向かえば明るい未来が待っている」という意味が込められていると語り継がれるほどです。
 昨年は光の回廊「ガレリア」の入口に高さ21mもある電飾「フロントーネ」が設置され、その「都市伝説」に彩りを添えました。今年のフロントーネは昨年よりも2m高いものとなり、明るい21世紀への入口を形作ります。
 今年は雪をイメージしたと思われるガレリアをくぐり、東遊園地に入ってくると、光の壁掛け「スパッリエーラ」が出迎えます。昨年までは幅100mの電飾が半円形に設置されていましたが、今年は円柱状に設置されます。昨年よりも高さが低くなるものの、これまでのルミナリエでは見られなかった光の演出が楽しめることでしょう。
 ところで、この「ルミナリエ」はバブル時代、東京での開催の話があったそうです。しかしルミナリエのディレクターであり考案者でもあるヴァレリオ・フェスティ氏は日本での開催を拒み続けてきたといわれています。この光の芸術は中世ヨーロッパの祭礼をヒントにしており、単なる見せ物にはしたくなかったものと思われます。そして1995年の阪神・淡路大震災のニュースに接したフェスティ氏は、犠牲者の鎮魂のため、イタリアから遠く離れた神戸での開催を決意したと言われています。
 しかし、昨年はミレニアムイベントとしてフェスティ氏はルミナリエと同様のイルミネーションイベント「ミレナリオ」を東京で開催しました。「東京ミレナリオ」は当初、1回限りの予定でしたが、すでに今年と来年の開催が決まっています。また、今年は埼玉県浦和市でも同様のイルミネーションイベントの開催が予定されており、阪神・淡路大震災の風化とともに「神戸ルミナリエ」の神戸開催の意義も失われつつあります。
 今年の神戸ルミナリエのテーマは「光の永遠(インフィニティ)」。震災から芽生えた新しい文化として、ルミナリエが神戸で永遠に続けられていくことを望みたいものです。


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