ふるさと切手博物館
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公開日:1999年5月1日
おまけコーナー■「板東収容所切手」
ドイツ館半券  3月某日、四国へ行く機会があった。
 せっかく四国に来たのだから、定番の讃岐うどんを食べ、マニアックな徳島ラーメンを食べる…ではなく、切手収集家として見たい切手があった。その切手は徳島県鳴門市にある「鳴門市ドイツ館」で展示されている。

 ところで「板東俘虜(ふりょ)収容所」という名前を聞いて「ベートーベンの第九」を思い出せば、教養が高い人と言える。今や年末の風物詩となった「第九の合唱」は、日本で初めて、この俘虜収容所で行われた。
 しかし、そこそこの切手収集家になると「板東収容所切手」を真っ先に思い浮かべるはずである。
 第一次世界大戦で日本はドイツに宣戦布告し、中国山東省青島(チンタオ)を陥落。このときのドイツ兵俘虜953人が、1917年から2年8か月間、徳島県の板東俘虜収容所で抑留生活を送った。
 ところが、この収容所は松江豊寿所長の計らいで、俘虜となったドイツ兵に比較的自由な生活が許されていた。この世界的に珍しい俘虜収容所の記録を後世に残しているのが鳴門市ドイツ館である。
 具体的には「日本初の第九」に代表される音楽活動をはじめ、収容所の外でも、地元の人に西欧の文化を啓蒙、指導したり、収容所内でも俘虜が管理する印刷所等を設けて出版活動が行われた。
板東収容所切手  その一環として、収容所独自の郵便局の運営され、収容所内しか通用しないが、2種類の切手が発行された。2銭切手には哨舎(写真右)、5銭切手に収容所の建物(写真左)が描かれている。これが知る人ぞ知る「板東収容所切手」である。
 ただし、これは政府機関が発行した切手ではないため、厳密には「切手」とは言わないが、郵便の歴史を考えると、収容所内とはいえ、政府とは別の郵便制度が存在していた証拠となることから、コレクターの間では「切手」として扱われている。
 この切手は「ガリ版」(謄写版)で刷られ、一見、みすぼらしいが、現在、市場では1組20万円ものプレミアがついている。
 そのプレミアからして、切手収集家でも見る機会は、ほとんどないが「鳴門市ドイツ館」では実物が常設展示されて誰でも見ることができる。(ただしシートに限り写真で展示)
 「鳴門市ドイツ館」は四国霊場八十八か所めぐり第一番札所「霊山寺」のすぐ近くにあるので、お近くへお立ち寄りの際は、是非、足を運んでいただきたい。


鳴門市ドイツ館
開館時間:9時30分~16時40分
休館日:毎週月曜日(ただし祝日の場合は開館)、祝日の翌日(ただし日曜、祝日の場合は開館)、12月28~31日、1月4~6日
観覧料:大人400円、小中学生100円
※「鳴門市ドイツ館」は館内撮影禁止のため、切手は「さくら切手カタログ」(日本郵趣協会)から転載しました。
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