連載小説1998年11月1日
 明日の大地へ〜第21節、第22節

◆目次◆

21・神懸かりの出会い

22・謎の正体

(全33節)


21・神懸かりの出会い

神戸市役所ロビーの伝言板  1月21日。
 この日はシオリ一人が配給調達に出かけた。今日のメニューは牛乳と胸やけがしそうなぐらいバターを挟んだコッペパンである。
 オヤジは、黙々と新聞を読んでいる。相変わらずの朝の光景であるが、今日は違っていた。オヤジが読む新聞の反対側を、シオリがパンを頬張りながら、顔を近づけて熱心に読んでいるのである。
 その新聞の一面には「死者、不明5千人超す」「初の『震度7』判定」という絶叫的な大見出しが並んでいるが、シオリは、その見出しの記事には目もくれなかった。
 そして、オヤジが新聞をめくろうとした瞬間…
「わっ、シオリさんか。いきなり、そんなところに顔があるからビックリしたわ」
 何しろオヤジの左手を間近で眺めるような状態で、シオリの顔があるのだから、驚くのも当然だろう。
「すみません。ちょっと天気が気になってたものですから…」
「なんかあるんか?」
「明日、大雨が降るみたいで…」
「やばいなぁ。瓦が落ちてるから雨漏りするで。どうする。オヤジ」
 それでも新聞を読み続けるオヤジに、お伺いをたてた。
「ビニールシートみたいなんは、家になかったか」
「この前、地震で散らかってたのを片付けたけど、そんなん見んかったで」
「大野さんに頼んでみたら、どうかしら」
「そうやな。いっぺん頼んでみよか」
 食事が終わるとオレは大野さんのマンションへ向かった。ちょうど大野さんが部屋から出てくるところだった。
「おっ、久しぶりやな」
「ちょっと大野さんに頼みがあるんやけど」
「なんや」
「明日、大雨か降るらしいんやけど、家、瓦が落ちてしもて…どこかでビニールシート売ってるとこ知らんやろか」
 大野さんは、腕組みをして天を仰いだ。
「そう言うたら、キミの名前、聞いてなかったな。それより、家、どこや」
「えっ」
「ワシらがなんとかしたるわ」
「でも…」
 と言いつつも、大野さんを家の前まで連れてきた。こんな時に頼れるのは大野さんしかいない。
「なんや小林さんのボンボンやったんか」
「ええ、まぁ」
「大分、ガタがきとるなぁ」
 しばらく考え込んで、
「昼間は家におるやろ。何時になるかわからんけど、屋根にシートをかけたるわ」
 頼りにしているが、そこまでは期待していなかった。地震発生以来、何から何まで大野さんの世話になっている。
 オレの困惑が顔に出たのか、再び大野さんは話しかけてきた。
「工賃の心配しとるんか。そんな心配はせんでええ。ボランティアや、ボランティア」
「そうはいうけど…」
「気にすんな。ワシ、ほかの家にも屋根にシート掛けるように頼まれてるから、ちょっと出掛けてくるわ。ちゃんと、家におるんやで」
 そう言い残すと、大野さんは逃げるように去っていった。
 その大野さんとすれ違って、タカシとサトコが、こちらへ向かってくるのが見えた。
 そして、黒いスーツに黒ネクタイのタカシと黒いコートを羽織ったサトコが白い顔をしてオレの前に立った。
「おっす」
 タカシは無表情に挨拶をした。
「よぉ帰ってこれたなあ。ビックリしたやろ」
「ああ、ビックリした」
「外で立ち話もなんやから、奥に入り。断水中やからお茶は出んけど…」
 今や多目的部屋となった座敷に黒服の二人を招き入れた。
 座敷ではシオリが、一人で、また新聞を読んでいた。
「あれ、オヤジは」
「近所を散歩するって、出ていったけど…」
 シオリは読んでいた新聞を閉じると、タカシと目があった。
「あっ、こんにちは、久しぶりですね。あたしのこと覚えてます?」
 一年前の今頃、信州でタカシとシオリは顔を合わせている。
「あ、あぁ、シオリさんか…久しぶりやな…」
「もしかして、誰か亡くなったの」
 二人の服装を見て、シオリは慌てて座布団を敷き始めた。
「オレの婚約者の家族が、地震で、みんな亡くなったんや」
「婚約者って…」
 タカシは隣にいるサトコに目をやった。
 オレは驚いたが、シオリは表情を変えなかった。なぜならシオリとサトコは今日初めて顔を会わせる。
「あ、あの…立ち話も、なんですから、お二人とも、こたつに入って」
 戸惑うオレをよそに、シオリは二人を着席させた。
「ホンマやったら、土産のひとつでも持って邪魔したかったんやけど…昨日、サトコの家族の密葬で加古川へ行ってたんで…」
「加古川…」
「サトコの父方の親戚の人が加古川に住んでて、その人、もう高齢なんで、助けに行けんかったことを悔やんでなぁ。昨日の夕方、簡単な葬式をして、墓に納骨してもらって、帰ってきたところなんや」
 タカシは少しの間を作ってくれた。
 それなのにオレもシオリも返す言葉がない。
「…オレは、サトコの家族とはゆっくりと会ったことなかったけど、なんぼ簡単な葬式でも、遺影のない葬式は寂しいもんやったで…」
 タカシの話を、ずっと聞いていたサトコがハンカチを取り出して、あふれ出る涙を拭った。
 そこに、また勝手口から声がした。
「小林君、おるか」
 大野さんの声だ。オレは静まりかえった座敷から逃げるように勝手口へ向かった。
「一時間ぐらいしたら、キミとこの屋根にビニールシートかけたるわ」
「それは、どうも…」
 大野さんの後には、あの松浦サトコさんのご両親がいた。
「そこでや、写真館の息子のキミに頼みがあるんやけどなぁ」
「大野さんの頼みやったら何でも聞くで。いろいろ世話になってるから」
「そうか。それは頼もしい。キミがあの日、ワシと掘り出した娘さんがおるやろ。彼女、七五三の時に、ここで写真を撮ってもらったらしいんや。その写真を探してやってくれんやろか」
 あの血塗れの娘さんが、子供の頃、この店で写真を撮っていたなんて…
「探してみますけど…今、うちの店…」
 突然、サトコさんの母親がオレの前へ、せり出してきた。
「女の子やから三歳か七歳のときやと思うんです。何しろ、サトコの家も私の家も地震で壊れてしまって…せめて、あの子の写真だけでもと、ずっと考えてたんです。今朝、母が、この写真館でサトコの七五三の写真を撮ったことを思い出しまして、もしかしたらと思いまして…」
「は…はい。わかりました。できるかぎり探してみます。ところで、サトコさんはおいくつだったんですか」
「十九歳です」
「ということは…十六年前か十二年前ですね。探してみます。ただ、ネガは見つかるかも知れませんけど、すぐに写真が焼けんので、日にちが、かかるんですが、よろしいですか」
「はい。サトコの写真ができるのでしたら…」
 夫婦はそろって頭を下げた。
 用件を済ませて座敷に戻ると、三人は、まだ沈黙の中にとり残されていた。
「バタバタしてて悪いなぁ」
「ええんや。こっちから押し掛けてきたんやからな。悪いのはこっちや」
 ふと、タカシの隣に座るサトコが目に入った。
「キミ、確か、松浦サトコっていう名前やなかったか?」
 サトコはコクリとうなづいたが、その後の話題が続かなかった。 何しろ家族全員が死亡し、自分だけが生き延びているサトコの胸中を考えると、同姓同名の女性の遺体をオレが掘り起こしたという話は事実でも不謹慎である。
「おまえの言いたいことはわかってる。警察発表で、サトコも死んでることになってるんやろ」
「知ってたんか」
「ラジオで聴いた」
「そうか…実はなぁ、その子、この近所に住んでた同姓同名の女の子なんや」
「えっ」
 サトコが初めて反応した。
「間違いやなかったんか」
 タカシも驚いた。
「間違いやと思て、これから警察へ行こかと思てたんや」
 そこでオレは、もうひとりの松浦サトコさんについて二人に喋った。
「へぇ。私と同じ名前の人が…」
「そうなんやけど…。ところで、お二人のご用件を聞いてなかったな…。何か用があって、来たんやろ」
「ああ…実はオレ、さっきも言うたけど、サトコと結婚することに決めたんや…」
 オレとシオリは顔を見合わせた。何も言葉を交わさなかったが、考えていたことは一緒だったように思う。
「こんなときに、おめでとう…って言うてええんか…」
 オレは心から祝福してあげたい気持ちだった。
「それでな、オレ、会社クビになったんや。おまえとこでアルバイトでええから雇うてくれへんか」
 その声はかすかに震え、今にも泣きだしそうである。
「クビって」
 その経緯を、タカシから聞き出した。大地震が悪いとはいえ、家族を失ったサトコと一緒にいたことが「会社の一大事にオンナと遊んでいる」と思われ、解雇されるのは、あまりにも理不尽である。
「そやけど…仕事はあるけど、今、オレとこ給料出されへんで。いろいろ物入で…」
「そうか…」
 タカシは一瞬、首をうなだれたが、再び、オレの目を見た。今度は一転して鋭い目つきである。
「わかった。金はいらん。去年のボーナスも少し残ってるし、失業保険も貰えると思うから…ただ、次の仕事が見つかるまでの間、何か手伝わせてくれへんか」
 オレと同じような仕事をしてもらうのにタダ働きというわけにはいかない。成人の日の写真をタダで現像してもらえるとはいえ、その分で浮いた金は自宅兼店舗の修復費用に使いたい。その前に、それほど金があるわけでもない。
「頼む」
 タカシはしつこく頼んできた。
「とりあえずオヤジに聞いてみるわ。オレ一人で決められんし…」
 返事を保留した。
「でも、いきなりで悪いんやけど、ちょっと手伝ってもらえんやろか」
 オレはタカシの婚約者と同姓同名の松浦サトコさんのネガを一緒に探してほしいと頼んだ。
「同じ名前だし、何となく他人じゃないみたい」
 今まで青白い顔をしていたサトコの顔は、少し赤みが増したように見える。
 話がまとまるとオレは納戸から古い伝票とアルバムの入った段ボール箱を座敷に運び入れた。
「伝票をめくって『松浦』を探してくれへんか。十六年前か十二年前やから…今年が九五年で、ええと」
「七九年と八三年ね」
 サトコは 素早く答えた。同姓同名同士とはいえ、一人の死が落ち込んでいる人を励まそうとしている。
 オレは神懸かりのようなものを感じた。

22・謎の正体

「この伝票、昭和何年で書いてあるで。七九年て昭和何年や」
 タカシは伝票の表紙の年号を目で追った。
「今年は平成七年やから…ううむ」
 みんな揃って腕組みをしながら考えた。その仕草はコントやドラマのように息が揃っていた。
「阪神が優勝したんは八五年で昭和六十年やったから、それから六年前になるから…ええと、七九年は昭和五十四年か」
「タカシ、そういう思い出し方って、空しくないか?」
「そうやな。こんな時に暗い話はやめよう」
 オレとタカシは熱心なタイガースファンだが、このごろの腑甲斐ない戦いに、かなりファン熱も醒めつつあった。オレがタカシと知り合ったのも、タイガース戦の野球観戦がきっかけだった。タカシやほかのトラキチの同級生が集まって、よく甲子園球場へ野球観戦に行ったが、最近では野球観戦よりも、もっぱらストレス解消のため、ライトスタンドで私設応援団に交じって大声を張り上げるだけとなっていた。
「じゃあ、昭和五十四年か五十八年ね」
 オレたち二人の会話に、こんなに深い経緯があったことを無視し、シオリとサトコは熱心に伝票を探し続けている。
「あっ、これ昭和五十四年って書いてあるわ」
「探してみましょう」
 今日初めて会った二人なのに、シオリとサトコは、すっかり意気投合しているではないか。オレたちも二人の熱心な仕事ぶりに負けじと、その年代のアルバムを探すことにした。
 そんなところに、どこをブラブラしていたのか、オヤジが戻ってきた。
「おおっ、頑張っとるなぁ」
 オレたち四人が座敷を所狭しと活用しているにも関わらず、オヤジは強引に入ってきた。
「そこの喫茶店が開いてたから、時間つぶしてたんやけど、商店街の連中が集まってたんで、いろいろ話し込んでたんや。どこの店もメチャメチャやったらしいわ。喫茶店も壁紙が破れてコンクリにヒビが入っとったしなぁ。それに商店街の連中から写真のこと聞かれてなぁ。マサルの言うとおりや。みんな写真を欲しがってるわ」
「そうか」
「眼鏡屋の娘さん、避難所でボランティアしてるんやて、偉いなぁ」
「ああでもない、こうでもない」と黙々と伝票と写真を照らし合わせているオレたちに、オヤジは延々と商店街の被害情報を聞かせ続けた。
「わかった、わかった」
 オレは適当に返事をした。
 そして、サトコとシオリは、今まで繰っていた伝票を同時にバタンと閉じた。
「ワシ、うるさかったか。すまんなぁ」
 その音でびっくりしたのか、オヤジは体裁が悪そうに、ロマンスグレーの頭をかいた。
「いえ、違うんです。松浦って人の写真を探してたんですけど、見つからなくって…」
 不思議そうな顔をしているオヤジに、今、オレたちが何のために写真を探しているのかを説明した。すると、オヤジは思い出したように、膝をポンと叩いた。
「それやったら、松浦では出てこんわ。多分、あのお婆ちゃんの名前で伝票に書いてあるはずや」
「あのお婆さん、なんていう名字や」
「渡辺さんや」
「ワタナベ?」
 再び、シオリとサトコは伝票を繰りはじめた。
「お婆ちゃん。お孫さんの写真を撮ってほしいって、この店来たことあるからなぁ。ん。待てよ! その写真、そんなこと、せんでも、あるぞ」
 オヤジは立ち上がった。
 同時にサトコは伝票をめくっていた手を止めて、オヤジの顔を見た。かたや、シオリはその手を止めなかった。この数日で、オヤジのいい加減な性格を見抜いてしまったのだろうか。
「店に飾ってあったはずや」
 オレは目を閉じて、店の様子を思い出した。瞼の裏には地震前の店の様子が映しだされる。
「もしかして、時計とカレンダーの間に飾ってあった女の子の写真か?」
「そうや、それ。ちょっと持ってくるわ」
 しばらくして、オヤジは円筒形に丸められた紙を持ってきた。
「地震で額が割れてしもてなぁ。写真だけ取っておいたんや」
 持っていた紙をこたつの上に広げた。
 それは写真だった。確かに幼い少女が晴れ着を来て、千歳飴を持って写っている。だが、この少女の顔から、オレが掘り起こした血塗れの顔を想像することはできない。
 しかも長い間、蛍光灯にさらされていたためか、カラー写真ではあるものの、すこしセピア色のベールがかかっていて、年月を感じさせる。
「可愛い…」
 サトコは、その写真を手にとって、じっくりと眺めた。
 そういえば、オヤジに写真を探している話はしたが、まだサトコの身の上の話をしていなかったし、タカシのアルバイトのことも言っていない。
「オヤジ、ちょっと来てくれへんか」
 オレはオヤジの袖をつかんで、勝手口から外へ出た。そこで、サトコの話やタカシのことを話した。
「そうか。それで二人とも黒い服を着てたんか。なんとなく、どちらかの身内が地震で亡くなったんやな…とは思て、何も聞かんかったんやけど…。そやけど、あの二人、これから大変やなぁ」
 オヤジは腕組みをして屋根を見上げた。
「あんまり高給は出せんけど、アルバイトの一人ぐらい、なんとかなるやろ」
「そうか、ええか」
「ああ」
 早速、座敷へ戻ってタカシに、そのことを伝えた。
 タカシはオレの手を握って、涙ながらに喜んだ。
「ありがとう。ありがとう。オレ、何でもするから…」
「あ、あのなぁ。タカシ。そんなに喜んでくれるんはええけど、給料は期待できんで。経営者見習いのオレでも高校生のバイト程度しか、もらってないんやから」
「ええんや。オヤジさん。ありがとうございます」
 タカシは立ち上がって、オヤジに一礼した。
「かまへん。かまへん。今日は疲れたやろ。今日の仕事はコレでしまいや。ところで、さっきマサルから聞いたんやけど、サトコさんも大変やったなあ。これから、いろいろとあるやろうけど、何かあったら、すぐにワシとこに相談においで」
「そやそや。これ以上、ここで仕事したら服も汚れるから、今日の仕事は、おしまい」
「でも、このお写真は…」
 サトコは、もう一人のサトコさんの写真をしきりに気にしていた。
「その写真は、明日、オレからサトコさんのご両親に渡しとくわ。今日は土曜日やし、半ドンにしよ」
 夕方、傷んだ屋根にビニールシートをかけてくれた大野さんが作業終了の報告にやってきた。
 応対したのはオヤジだった。
「いやぁ。すんまへん。それで、代金はなんぼです?」
「いやいや、気を遣わんように。オヤジさんには、いろいろ、よくしてもらってるし、息子さんにも地震のあった日にワシの仕事、手伝ってもろたし…」
「でも、せめてビニールシート代ぐらいは…元手がかかってるんやから…」
 オヤジはあらかじめ茶色い封筒に入れておいた金を大野さんに手渡そうとした。だが、大野さんは強く拒んだ。
「これから、建物の補修とかで物入りやろうから、受け取れまへん」
「そんなにお金は入ってないんで、お仲間との呑み代にでも…」
「どこも店、開いてませんし、自動販売機も潰れてますし…」
 しばらくの押問答の末、
「わかりました。この家の補修はワシらが請け負いましょう。そのときの費用の手付金としてお預かりします。これなら、いいでしょう」
 大野さんはごつい手で、その封筒を丁寧に受け取り、腹巻へ無造作に放りこんだ。そして、胸ポケットから一枚の名刺をオヤジに手渡した。
「街全体がこんな状態なんで、いつ、補修工事に取り掛かれるか、わからんけど、よその業者には頼まんといてや。明後日、見積もりに来るさかい、不満があればバシバシ言ってください」
 そう言い残して、大野さんたちは引き上げた。
 そのあと、オレはオヤジから大野さんの名刺を見せられた。
 大野建設株式会社 代表取締役 大野政章
「大野さんて、ただの大工職人やなかったんか。建設会社の社長やったんやな。それで、コンテナハウスとかビニールシートとか手配できたんやな」
 シオリも、オレが見ている名刺を横から覗き込んでいたので、その名刺をシオリに手渡した。
「それだけじゃないわ。大野さんが経営する会社は大阪市にあるわよ」
 その名刺を、今度はオヤジに渡した。
「前から、よう、わからん人やったけど、名刺をもらってから、余計、大野さんが、わからんようになったわ。もしかして、タダで屋根の修理して、その恩を着せて、法外な補修費用を取るんと違うか?」
「まさか…」
 この日の夜九時すぎ、大きな余震があった。さすがのシオリも揺れた瞬間、オレにしがみついてきた。ラジオでは淡路島北淡町で震度4、神戸で震度3だと伝えていた。

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※写真は『阪神大震災・神戸からの報告書』(データハウス刊・菊地 馨著)135頁に掲載した写真です。

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