君は「琉神マブヤー」を見たか?!

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最近、沖縄の子供たちの間で熱く語られているヒーローがいる。それはゴーオンジャーでもなければ仮面ライダーキバでもない。そのヒーローの名は「琉神マブヤー」。名前から察するとおり沖縄のヒーローである。

数年前からローカルヒーローというものが流行しているが、なんと、この「琉神マブヤー」は10月から沖縄でTVでも放送され、沖縄の子供たちの心をわしづかみにしているのだ。なにしろ我が3歳の娘も「琉神マブヤー」にはまり、プリキュアよりも夢中になって見ている。

さて、この「琉神マブヤー」。県外の方々にわかりやすく説明すると「仮面ライダー」を沖縄風にパロディにしたものといえばいいだろうか。その完成度はパロディというには失礼かもしれない。ヒーローの「琉神マブヤー」は、沖縄県民の心を司る「マブイストーン」を奪おうとする「悪の組織マジムン」と戦う。ありきたりな勧善懲悪のストーリーであるが、実は毎回、沖縄の文化、風習などが所々に盛り込まれ、それは子供だけのものではなく、私のようなナイチャーの大人が見ても、興味深い内容となっている。

詳しくは公式サイトを見ていただくとして、「琉神マブヤー」は、普段、やちむん(焼き物、陶芸)修行中のカナイという青年の中におり「悪の軍団マジムン」(「マジムン」とは、ウチナーグチで「魔物、化け物」という意味)が行動を起こすと、カナイは「琉神マブヤー」に変身して、マジムンたちをやっつける。必殺技は「スーパーメーゴーサー(「メーゴーサー」とはウチナーグチで「げんこつ」という意味)」。

[2008年11月8日追記]第6話で新しい必殺技「ティーダヤーチュー」が登場した。「ティーダ」は「太陽」。「ヤーチュー」は「お灸を据える」という意味。ちなみに琉神マブヤーは変身しなくてもこの技が使える

そもそもカナイの中に琉神マブヤーが宿ったのは、山城ストアのおばぁの「マブイグミ」がきっかけである。「マブイグミ」とは「魂を込める」という意味で、沖縄では、よくないことが起きると「マブイ(魂)を落とした」と言われ「マブイグミ」というおまじないを行うのが一般的である。この番組の中ではカナイの身に不運が立て続けに起こり、見かねたおばぁが「マブヤー マブヤー ウーティキミソーリ」とつぶやきながらカナイの背中をさすり、そのときに琉神マブヤーの魂がカナイの体に宿ったのだ。

また、ある時、マジムンたちが、石敢當(いしがんとう)のマブイストーンを奪い、沖縄のあちこちにある「石敢當」を消し去ったことがあった。その際、なぜ、マジムンが石敢當を消して喜ぶのか、その理由を話し合うシーンで、さりげなく「石敢當」とはどのような意味があるのかを説明してくれたりと、なにかと沖縄に根付く文化を私のような県外出身者に教えてくれるのである。

「琉神マブヤー」のテレビ放送は12月まで全13話行われる予定で、今日現在4話まで話が進んでいる。放送は琉球放送で毎週土曜日午前6時45分から。番組はほとんどがウチナーグチや沖縄なまりの会話で進められる。これまでマジムンたちが奪ったマブイストーンは「ウチナーグチ」「石敢當」「テーゲー(適当)」の3種。いずれも琉神マブヤーによって奪い返され、沖縄の平和が守られている。ただ、今回の「テーゲーのマブイストーン」に関しては、沖縄県民から「適当な性格」を奪ってしまい、マジムンたちは規則正しい性格になった沖縄の人たちをみて「(悪役なのに)いいことをして、よかったのか?」と疑問に思うシーンがあった。次回の放送では「エイサーのマブイストーン」が奪われる予定。さらに今後は「ちゃーがんじゅー」「いちゃりばちょーでー」「かちゃーしー」などのマブイストーンが奪われる予定になっており、どのような展開になるのか、楽しみである。

最後に、これから「琉神マブヤー」を見るナイチャーの方のために、予備知識として知っておきたいウチナーグチを記しておく。

ニライカナイ
琉神マブヤーはニライカナイの戦士である。ニライカナイとは理想郷という意味
琉球三山時代
14世紀、沖縄本島が3つの国に分かれていた時代。番組の冒頭で「琉球三山時代よりも昔、この島を治めていた九頭の竜が姿を変えたというマブイストーンを巡って,悪のマジムンと琉神マブヤーの戦いが始まった」という解説がある
うちなー
テーマ曲の中で「ウチナーが危ない」という歌詞が出てくる。沖縄のこと。「ウチナーグチ」は沖縄方言
でーじ
テーマ曲やサブタイトルで出てくる。「とても」「大変」という意味。テーマ曲では「デージ超やばい」という使われ方で出てくる。サブタイトルで必ず使われる「でーじなってる」や「でーじなとん」は「大変だ」「おおごとだ」という意味
あちこーこー
熱いという意味。テーマ曲の中で「あちこーこーのハートで」という歌詞が出てくる
たっぴらかす
琉神マブヤーがマジムンと戦うときに、つぶやく言葉。「叩きのめす」という意味
~デービル
悪役のキャラクター「ハブデービル」「オニヒトデービル」のようにデビル(Devil)の意味で使われているが、実は沖縄方言で「~です」「~ですよ」という意味。直訳すると「ハブですよ」「オニヒトデ(?)ですよ」になるだろうか。ちなみに那覇新都心には「がんじゅーでーびる」というビルが実在する。ビルの名前を直訳すると「元気ですよ」になる
クーバー
悪の軍団マジムンの「ショッカー」的な役回りの怪人。ウチナーグチでは「蜘蛛」のこと
はごー
クーバー1号、2号の鳴き声(?)。本来は「汚い」「醜い」という意味。第1回目の放送で、悪の軍団マジムンがウチナーグチのマブイストーンを奪い、沖縄からウチナーグチが消えた際、クーバーたちが「はごー」と鳴くと、リーダーの「ハブデービル」に「ウチナーグチをしゃべるな」と怒られるシーンがあった。ちなみに「ハブデービル」は「はごー山」出身
ひんぎれ~
悪の軍団マジムンが、琉神マブヤーにやられて退散するときに言う。「逃げろー」という意味。なぜか悪の軍団マジムンは、琉神マブヤーとすれ違うようにして退散する

[2008年11月8日追記]
「琉神マブヤー」の出演者の情報が意外に少ない(公式サイトにもない)ので、出演者個人のブログ等のリンク付きで、出演者を紹介する(敬称略)。

琉神マブヤー・カナイ
知念臣悟 (パーラナイサーラナイ )
福地紅亜
桃原遥
与那原犬(人間)
山城智二 (演芸集団FEC団長)
与那原犬(犬)
ブルース
福地岩次郎
新垣正弘
オバァ
吉田妙子
ハブデービル
仲座健太 (ハンサム)
オニヒトデービル
平安信行 (劇団O.Z.E)
マングーチュ
上門みき (日本アルティスタアカデミー)
クーバー1号
照屋哉
クーバー2号
金城博之 (ハンサム)
ナレーション
あったゆういち